くま子と三匹の倖せ日記


   み〜けた〜 

 
     ある日きょろきょろ歩いていたら、歌声が聞こえて来た。

     背中が温かくって、胸がふくらんできた。

     おもわずその陽だまりに腰をおろした。

     そのまま三匹で何時の間にかお昼ねしてた。

     その日から毎日の、三匹のお昼ねお布団の陽だまりになった。

     その声の揺り篭で眠るように、ゆらゆら眠れるお布団になった。

     ある日勇気をだして三匹で、声の聞こえてくるお家の窓の下まで行きました。

     その窓から聞こえる声が、三匹のお布団の上の陽だまりつくってくれてるんだって知りました。

     倖せいっぱいになって駆けて帰ろうとしたら、後ろから聞こえて来たんよっ。

     「何時も歌ったげるね。子守唄」って。

     
その日からはずっと、三匹のお家の中まで陽だまりが届いてくるの。

     
あれから毎日 お家の中の揺り篭の中で眠っています。



              


 
  み〜けた〜  

     
ある朝新聞受けに、小さな包みが入ってました。

     お家に入って開けてみると、クルミの実のような小さな可愛い粘土の作品でした。

     まあるいお腹の部分に、トンボが掘り込んで描かれてます。

     ちっちゃな和紙封筒のお手紙もありました。

     『 野火に舞う 赤とんぼ ・・・ 夢 』 はやま って

     それだけしかない届き物でした。

     きっと三匹のお家を覗いてくれて、赤とんぼさんを道案内してくれた人からの贈り物なんだ

     とおもっ た。

     くま子とこの嬉しさを窯詰めすることにしました。

     三匹でくま子のお手伝いして、野火の空に舞う赤とんぼさんを早く見たいねって話しました。

     赤とんぼ 連れてきてくれた はやま さん

     赤とんぼさんが飛べるようになったら、お迎えにきてあげてね。

     この日記に写真で飛んでるの見てくれたら、逢いに来てあげて。

     良い子にしてたって おんぶしてあげて。

     夕日がすっかり沈んだあとは、あなたの背中で寝させてあげて。

     また次の日の野火の空 遊びにきてくれるの待ってます。



     はやまさん 見てくれてますか・・・?

     少しばたばたしてましたので日にちがかかってしまいましたが

     あなたからのお届け物の器が焼けました。

     写真が下手なので、良く撮れなかったのですが

     とんぼさんが飛んでくれました。

     くま子と三匹で話し合ったんですが、はやまさんのことをとんぼさんって呼ぶことにしました。

     写真とこのお手紙を読んでくれたら、お迎えに来ていただけませんか?・・・・・

     きっとそうしてほしいとみんなでお待ちしてます。


  
             
 ・・・ とんぼさんきてくれるのかな〜・・・?

                ・・・来てくれるよきっと!

                ・・・きっとお迎えにくるよね〜。!


     0月0日 

     昨夜遅く、メールが届いてました。

     知らないひとからだとおもってました。でもすぐわかったんです。

     ( 『 こんにちは わたし とんぼ です。』 突然あんなことしてから、後でどうしょうっておもってました。

     でもチビ君とデブリンちゃんにも一緒に待っててもらえてるなんて夢みたいでした。

     でもなんだかとっても恥ずかしくて、やっぱりお迎えに行く勇気が出せません。)ってお手紙でした。

     三匹で肩並べて、どうしたらとんぼさんにお渡しできるんだろう・・って考えました。

     チビ君のアイデアで、またポストの中に入れとこうよ!って話になり、とんぼさんにお返事かきました。

     でも 『もっと恥ずかしいです』って返ってきました。

     どうしたらトンボさんをおうちに帰してあげられるのか、三匹の悩みになりました。

     (それじゃー とんぼさんがお迎えにきてやってくれやすい方法考えてってお願いしました)

     ・・・・・・・・・・・・・

     三匹がだれも何時ものようには話かけてこない、夜更けになってゆきました・・・

     だれが一番多かっただろう・・・寝返りうってる音だけが聞こえてた 灯りを消した部屋でした。



  
  ★ 0月0日

       実は先日メールが入りました。 とんぼさんからのお手紙でした。

       「こんにちは チビ君 デブリンちゃん。ずっと ずっと行きたくて、でも恥ずかしくって考えてました。

       早くお返事をしなくては・・・あせるばかりだけど、まだどんな方法の勇気も出ないでいます。」って

       今は三匹がとんぼさんを困らせてしまってるお手紙でした。

       またまた三匹で、昨日から考えて 考えて一晩明かしました。

       このままとんぼさんを苦しめたら、きっとこの器のとんぼさんまでが

       泣きべそかいて飛べなくなりそうで心配です。・・・




       0月0日

       とんぼさんにお手紙を書きました。

       三匹でいろんな意見を出し合って、とんぼさんがお迎えに来やすい方法を考えました。

       くま子が時折遊びに行く お花のお寺に行って、訳を話して相談をしました。

       とてもこころよく、優しくそのご婦人がお引き受けして下さることになりました。

       そのことをとんぼさんに伝えました。

       とんぼさんが何時行くのかは、当然聞きませんでした。

       お預けした方に、何時とんぼさんがお迎えに来てくれたかも

       この後ずっと聞かないで居ようときめました。

       少しだけ 少しだけ、とんぼさんに会えないままになることが

       ちょっぴり三匹には寂しくおもえました。

       でも三匹の頂いた嬉しさには、少しもかわりがありませんでした。

       まあるいお空に飛んでいるとんぼさんを、三匹でなが〜い時間見つめました。

       お別れなんかじゃないもんねって 三匹のそれぞれの胸の中に

       おんなじおもいがありました。

       このとんぼさんに三匹だけが呼ぶ、お名前をつけました。

       ‥夢とんぼさん‥っておなまえをつけました。

       お散歩の時にはいつも三匹で、お空に夢とんぼさんを探して歩くことにしました。

       ありがとう とんぼさん 夢とんぼさん     
         


          
    





  
  み〜けた〜 

     ある朝電話のベルが鳴ったけど、受話器を取るまえに切れてしまいました。

     その午後今日二本目の電話が鳴りました。

     作陶の体験希望の人でした。

     教室を閉めてしまったのだと伝えると、受話器の向こうで話し声が聞こえてました。

     その後 「やっぱり駄目ですかっ」 の声が返ってきました。

      
なぜだったのか、どうしたのって聞いたんです。

     そしたら 『 結婚するんですけど、二人で二個づつ湯呑みを作って、両親に渡したいんです』

     そう言葉が届きました。

     ふたりのその気持ちのどのへんまで聞いた時だったでしょう・・・

     三匹ね うるるん星になりました。

     初めての体験のようでした。電動ロクロに座りました。

     彼にまず二個湯呑み茶碗を作ってもらいました。

     まもなく花嫁さんの彼女が、一つ目の湯呑み茶碗を作るお手伝いをしました。

     ふたつ目を作る時、くま子は席を立ちました。

     「君がここに座って、彼女に手を添えて、二人だけで作り」って。

     くま子がお手伝いしたもんよりも、ずっとずっと素敵な形になりました。

     正直少し悔しかったくま子です(苦笑)

     ジューンブライトの花嫁さんたちにお届けしなけりゃならない

     今 窯焚きする時の、大きな大きなプレッシャーが倖せなくま子たちです。



  
  0月0日 

     今日、宅配便に荷物を取りにきてもらいました。

     おふたりの ご両親へのおもいに少しでも近い 

     色に焼き上げることができてるのかどうか・・

     おふたりの 気持ちの形の色にそのままできたのかどうか・・・

     とっても心配な三匹です。・・・

     内緒で、4個並べて写真も撮りました。

     でも おふたりの手からご両親に渡されるまでは

     三匹にももう見えない物にしておくことに決めました。

     6月11日だと聞いてます。その日なのか

     ご両親に手渡された後に、三匹もその幸せに遠くから触れさせて欲しいと思ってます。

     そんなおふたりの手作りの気持ちを

     見た人たちもきっと! 少しずつでもこの温かさの分け前にありつけそう・・・



    
平成18年6月11日 おふたりさんご結婚おめでとうございます。

    あなた方のことを聞いて下さっていた方から、昨夜メールだ届きました。

    私は気付いてなかったのですが、今日は友引なんですね。

    「きっとお幸せになられることでしょうね」ってメールを頂きました。

    その方からのあなた方への御祝の言葉だとおもいお知らせいたします。

    なんだか居ないはずの3人目の子供の晴れの日に祝いの言葉を頂いた気持ちです。

    ですから今日はあらためてお祝いを心から申しあげます。

    末永く素敵な人生を すばらしいご家庭をお築きください。

    お許し頂いていたおふたりの作品の写真を載せさせてもらいますね。

    


    上の写真の左の二個は新郎の作品です。

    湯呑みにはそれぞれ大きくお父様とお母様の名前を書き込んでありました。

    そして右側の二個には、新婦が両親に宛、(ありがとうと書き込んでいます)

    今日のおふたりの晴れ姿のように、きっとどんな物にも代えがたい今日からの宝物として

    それぞれのご両親の手の中にありつづけて行くのだろうとおもいます。

    おふたりさん ほんとうにおめでとう。

    こんなふうにおふたりに出逢えることができた陶芸をしていた幸運さえ今感じています。

    お幸せにね。

                                          くま子と三匹の野良



             


 
  み〜けた〜  


     二匹の友情み〜けた〜

     泣きまねしてるデブリンの

     背中の毛づくろいする やんちゃチビ

     意地っ張りばかり見せててな・・・・・

   
                              
     


        



   み〜けた〜 

    工房を訪れてくれるイタチ君

    どんな子なのでしょう・・・?

    最初に異変に気付いたのは、コーヒーに入れるフレッシュの無くなることでした。

    個入りの袋入りのまま、工房の作陶台の上に置いたままにした翌朝でした。

    外袋がふたつ分、昨日買ってきたものです。

    中味の容器が、何処かにしまい込んであります。

    だとすれば当然冷蔵庫でしょう。

    だとすれば、私も随分片付けのできる奴に知らないうちになったものです。

    さすがの私でも、昨夜の窯詰めに窯の棚板にのせたはずはないでしょう。

    此処はネズミがおります。小さなカヤネズミばかりです。

    なのかな〜・・・?  なのかな〜〜・・・?

    そんなことが何度かありました。

    ある夜、窯に火を入れた晩でした。 もう入らないつもりで工房の電灯は消してました。

    窯場の方から部屋に戻ろうとした時です。

    工房の入り口の硝子の向こうに小さな、横に二個並んだ光の玉が動きます。

    あれっ ておもうと同時に、伸びあがってこちらを見てる彼(?)と初対面です。

    毎夜来てくれるようになりました。

    ところが悩みが出来ました。 とっても温かな悩みです。

    写真撮影ようにと花を生け込みました。

    一鉢には山採取の自然薯のツルを使いました。

    もう一鉢には、切花を買い付けてきて生けこみました。

    夜の電灯の明かりでは とおもい翌日の撮影にしました。

    翌朝工房に入ると同時に、おもわず部屋の隅々まではおろか

    窯場に至るまでの辺りまでの様子をうかがいました。

    伺いました。誰かがいたずらして隠れてるにちがいないと思えたのです。

    そんなはずのないことでも  思えてしまう出来事でした。

    ツル活けの先芽の数箇所が切れ落ちてます。

    切花を投げ込んだ花のなかに、赤いカーネーションの花だけがありません。

    ツルの切り落ちた部分はその場に落ちているんですが、赤いカーネーションだけは

    葉の部分茎の部分の一欠けらも何処にも見当たらないのです。

    さすがにこの時は、彼(?)だとは思えませんでした。

    その日の午後、たまたま外出先で、花屋さんが目に入って、もう一度その不思議さに 

    問いかけをしてみることにしました。 赤い色のものを10本とピンクのものを10本求めました。

    どうしてもその結果が気になり、夜中までの何度かを覗いて見ることになりました。

    やはりちがう出来事だったのかのようなおもいのまま翌朝をむかえました。

    ピンク色のカーネーションの花が10本投げ込まれた、筒花瓶がありました。

    私が女性のイタチだと信じてることに、「違う」とはっきり仰った方が居られます。

    その女性の説明にはこうありました。

    「きっと女性のイタチへのプレゼントに持ち帰った」のだそうです。

    そしてあるお方は、私にこう教えてくれました。

    コーヒー用のフレッシュを持ち帰っているイタチは、きっと今、子供がいるのだそうです。

    私はそのどちらの方から聞かされたことも、まるで疑いはしませんでした。

    あの赤とピンクの花の投げ込みの不似合いさも

    切り落とされた数箇所の先芽で、私の感性などより

    はるかにまとまった姿だったかも知っていますから。

    そしてその後この話しを聞かせる人達が、笑って聞き流せない器らがあります。

    私がロクロをひき、テーブルに乾燥のため並べ置く夜のことです。

    その内の数点を選んだかのように、彼(?)の手足で創作がなされているのです。

    それは実に、あのくつ茶碗の伝説のようにです。

    爪の痕、押しひねったかのようなかた口つくり。

    その痕形のそれが感性ならば愛おしくその時の姿にさえあこがれてます。

    爪痕を消すなどしません。

    ましてやその出来栄えの形にふれることなく、窯に入れます。

    焼きあがったその器に、彼(?)らへの粗末な夜食を用意しておきます。

    ただひとつ心震えるように愛おしく笑えるのは

    彼(?)に創作意欲のある夜は、決まって私がおもてなしの膳を出さなかった晩のことです。



   0月0日

    少しあわただしさがあって。留守がちにし、明け方少しの時間だけ

    二匹の様子を見に戻ったり、あわててまた飛び出したりしてる間

    とんでもないことをしてしまってました。

    10日ほどイタチ君に食事の支度をしてやれませんでした。

    イタチ君に食事を出すのを忘れてました。 きっとすごくお腹を空かせて居たり

    哀しいおもいをさせてしまったのだろうとおもう。・・・・・

    落ち着けて、ハッと気が付いて 食事の支度をまたはじめたんですが

    その日からずっと、毎朝淋しい片付けをしています。

    僕の勝手である時はきっと満腹にしてあげたけど、また僕の勝手で今度はきっと

    それまで感じたことのなかったような、お腹の空いた苦しさと、食べずに帰った

    悲しい目にあわせたんだと、きっとあの子に遇わせた目の、何十分の一かもしれないけど

    とっても悲しい朝がつづいています。

    倖せ日記なんか、もう書けないな〜って気がしてる。・・・